朝9時ごろYHを発つ。きょうのルートはソースベリーまで。かなりの距離である。まずは湖水地方の湖散策である。感じとしては長野県の白樺湖や蓼科湖一帯の雰囲気。小さな湖がいくつも点在する。本当は車で回るのではなく、リュックを背負ってウォーキングするのが筋なのだが。気づいたのはこの辺りの建物はレンガではなく、自然の薄い石を重ねて積み上げて造られていること。だから遠めに見ると白と黒のまだら模様が何とも言えない感じを醸し出している。どこからこんな平たい石を切り出してくるのだろうか。 レイク・ディストゥリクト・センターで車を止め、ウインダミア湖を見る。この辺りは観光ツアーコースになっているらしく、日本人もよく見かけた。面白いのは外国で日本人同士が会うと、ちらっと視線を交わしつつ、何とも言えない気の使い方をする点。互いに何か意識し合う感じで、独特の空気が流れる。同じアジア人でも韓国人とも中国人とも違う雰囲気を醸し出しているので、日本人はすぐに分かる。不思議なものであるが、これっていったい何によるものでしょうね。 その後M6に乗り、一路南下する。このままウェールズに向かうつもりでいたが、時間に余裕があるため、一度は通り過ぎたリヴァプールに戻ることにする。これもナヴィがあるからこそであり、ラウンドアバウトを回り、路肩に車を止めて、ナヴィの目的地にリヴァプールのビートルズ記念館を入力する。こうして走ること約1時間、見事にビートルズ記念館に到着する。 雰囲気的には港町であり、独特の解放感が漂っている。ビートルズ記念館はビデオもカメラも撮影禁止だったのであるが、小生はそのアナウンスを見落としており、見事に撮影してきてしまった。60年代のリヴァプールのバーなどが再現されており、ビートルズ発祥の物語が語られていた。 最近TVでもシルヴィー・バルタンやジリオラ・チンクエッティなどの局がCMに用いられており、若者も新鮮に受け止めているようだが、私も60年代後半から70年代にかけて深夜放送ラジオなどに目覚めた世代である。「GO,GO,GO,GOES ON、糸居五郎でーす」の名調子ディク・ジョッキー糸居五郎のオールナイト・ニッポンや落合恵子のセイヤングなどにはまったものだ。そしてポール・マッカートニーによって発掘されアップルからデビューしたメリー・ホプキン。何とも言えない懐かしさがこみ上げてくる。今日はそのメリー・ホプキンの故郷ウエールズのポントードウを目指しているのだ。
かくしてリバプールの街をドライブした後、M6に戻り、ナヴィにポントードウを入力して再び南下する。ところがバーニングハム直前に来ると、イギリスに来て初めての高速での渋滞に遭遇する。ナヴィによると道路工事がなされている模様。すでに時間は4時半、ここでかなりの時間を費やす。バーニングハムを過ぎてM5に変わるが、再び渋滞。すでに6時である。 ナヴィはM4を選び、セヴァーン川を渡り、ウエールズに入る。ここはちょうど横浜のベイブリッジの感じ。料金も4ポンドくらいだった(高い!)。道路の看板にも英語とウエールズ語が併記されている。ところがシャワーがだんだんに強くなり、視界が悪くなる。目的地まではあと100キロ以上、ソースベリーには夜11時までに到着する必要がある。時間はすでに7時を過ぎている。まだ夕食も食べていない。雨はますます激しくなる。せめてウエールズのかつての首都カージフまではと思ったが、車の渋滞も激しく、まことに残念ながらここで戻ることを決定する。 ラウンドアバウトでM4をはずれ、ナヴィにソースベリーを入力し直して、UターンしてM4をロンドン方向に戻る。結局この判断は正解であり、これからまた一苦労するのであった。ナヴィは最短時間のルートを選択するので、私たちはどのルートを取るか分からない。M4をずっとロンドン方向に戻って、ナヴィはA345に誘導する。この辺りは小麦の畑が一面に広がっており、例のミステリーサークルやUFOが頻繁に発見される一帯である。しかし今回はここでは一つも見ることができなかった。 時間はすでに8時、雨のためかなり暗くなっており、ナヴィの指示する道はかなり狭く、辺りが麦畑のため、何とも言えない心細さを覚える。ラウンドアバウトがまた複雑であり、ナヴィの誘導がなければとても走り切ることはできない。対向車も後続車もほとんどなく、われわれの車が一台、麦畑の中を走っている。子供たちがUFOにさらわれたらどうしよう、などと言っているが、結構真実味を帯びる雰囲気である。 かくしてこのような場所を走ること2時間、10時にようやくYHに到着する。考えてみると結局夕食を食べる余裕がなかった。荷物の中にはまだラーメンが残っている。それとキャンプでの残りのガスがあった。これでYHの部屋でお湯を沸かしラーメンをすすり込む。しかしこれがけっこうウマイのである。腹が落ち着くと気分も落ち着く。かくしてイギリス旅行もあと1日を残すのみ。ここまで来れたことを主に感謝する。 |