1. アプローチ
・聖 書:啓示による(証明なし→信仰による確認)
・精神科学:帰納による(事実の観察→一般法則)
2. 人間の構成
・聖 書:体・魂・霊(創世記2:7)
・精神科学:肉体と精神
@ 精神を物理化学的現象へと還元
A 精神と物理化学的現象の分離
3. 人間の実存的状況
・聖 書:霊的に神からの分離(罪)→魂の肥大化
・精神科学:環境との相互作用における適応主体、霊的要因をみない
4.
人間の実存的問題のルーツ
・聖 書:神からの分離による魂と肉体の不健全な使用(flesh:肉)(創世記6:3)
・精神科学:環境適応(対他者・環境)の主体としての失敗
@ 条件反射:大脳における条件付けの実証(パブロフ)
A 精神分析:イドと超自我の葛藤の場としての意識的自我・主観主義(フロイト)
B 行動主義:刺激−反応系としてのシステム・客観主義(ワトソン)
C ゲシュタルト主義:要素還元を否定、全体的意味における意識作用(ケーラー・コフカ)
5. 精神病理という学問
人間の実存的あり方の理解と対応を意図する。
・聖 書:罪→霊的に神から分離(実存的不安)→自己追求(本質的に神経症的)
*あらゆるレベルでの必要の満たしを自己の資源にあってのみ担保する姿勢
・精神科学:環境適応における自我の防衛機制の失敗と破綻
→カセクト(固着)段階への退行
@心的装置:イド→自我→超自我
A発達過程:1次過程→2次過程/精神的エネルギーの配分と変遷
B防衛機制:抑圧、否定、摂取、同一化、投影、反動、分離、復元、観念化、合理化、退行、昇華
→不安=内的衝動に対する自我の無力感(制御不可能性への反応)
6. 精神疾患の基礎知識
@ 神経症:適応の破綻によるカセクト段階への退行→精神エネルギーの不健全な解消
・ ヒステリー:抑圧された精神的エネルギーの回避的解消
・ 強迫神経症:肛門期への自我とエネルギーの退行(恐怖症含む)
・ 不安神経症:浮動性不安・臓器への意識集中
・ ヒポコンドリー:上記が特体の臓器に注意が集中
A 精神病:ナルチシズム段階への退行
・ 躁鬱病:感情の病・人格は保たれる→拒絶感に脆弱な自我
・ 精神分裂病:全人格的病・人格が崩壊する→1次過程までの退行
7.
精神科学における治療法
@ 薬物治療:分裂病、鬱病→症状は改善する
A 精神療法:
・ 精神分析→自由連想による固着したエネルギーの解消(カタルシス)
・ 行動療法→旧条件付けの再条件付け
・ 森田療法→禅的な修業・過去やメカニズムは不問・生きる姿勢の是正
8. 福音と精神療法
・聖 書:肉(flesh)の処理
肉の定義:霊的に神から分離された体と魂による人の生き様・思考行動パタン→個性
信仰:神に信頼する任せた生き方の再条件付け
*アイデンティティーも生き方のプロトコルも霊的三者関係(神・人・サタン)において理解および対応
・精神科学:
@薬物療法→物理化学現象への還元に基づく
A精神療法:ソフト的対応・人間モデルの違いで千差万別・根拠があいまい
*"理想的人"あるいは"完全な人"の定義が不明
9.
人間の取り扱いのポイント
・聖 書:自分の魂を否む(禁欲ではなく、意識を離すこと)→禅、森田療法との共通点
根拠:精神交互作用の発見(パウロ、アウグスチヌス)
→自己意識による精神の惑乱・心の流れの停滞
対応:古い人の死、罪の対処、肉の対処→新しい人に生きる姿勢の条件付け
*生物的次元、心理的次元、社会的次元に留まらず霊的次元でのアイデンティティーの確立と問題処理
・精神科学:環境適応における自己実現→生存の原始レベルから高次のレベルでの欲求の満足(マズロウ)、霊的要素の欠如
10. まとめ
1) 方法論の違いはあるが、魂の理解においては共に共通認識できる部分はある。今後整合性を取る必要がある。
2)
人間のモデルの設定の仕方によって、病理の理解、対応が異なる。
3)
人間存在の問題のルーツは自我意識に目覚めたことであり、聖書では古い人の死と復活による新しい人の生を目指す。精神科学では逆に自己の能力の発達による自己実現を目指す。聖書的には魂的部分の取り扱いに過ぎない。
4)
次回は特に教会における精神疾患を抱えた方の取り扱いの問題点や注意すべき点を見ていきたい。