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日本経済新聞(2006.07.01)「大機小機」

<引用開始>
フォーワードルッキングな金融政策

 量的緩和政策が解除されてからほぼ四カ月が経過した。この間、日本経済は順調に拡大を続け、好調な企業収益が賃金や雇用の増加に反映し始めている。こうした状況は、日銀が四月末に公表した「展望リポート」に沿っているといえよう。従って、ゼロ金利から脱却し、経済状況にあわせて金利が「ゆっくり、小刻み」に変動する姿に戻るのもそう遠くはないと考えられる。
 ただし、ゼロ金利解除後の政策運営は極めて難しい環境下で行われることとなる。すなわち世界経済・市揚が従来にない高スピードで変貌していること、国内でも需給ギャップに対する物価の感応度低下に象徴されるように、景気判断に用いられる主要経済指標相互の感応度が異なってきていること、回帰方程式のような経験科学的手法に基づいた予測手段が十分な有効性を発揮できなくなっていることなどである。

 こうした困難な環境の下での有効な金融政策運営について、福井俊彦日銀総裁は「フォワードルッキングな金融政策」を提唱し、これを「短期的な物価安定という狭い視野に陥ることなく、先々の内・外の様々なリスクを十分に吟味し、中・長期的な物価の安定と振れの少ない経済の安定的拡大を目的とする金融政策運営」と解説している。
 振れの少ない安定的な経済の拡大を達成するために精査すべき点は、国内の最終需要、需給ギャップ、設備投資、単位労働コスト、企業収益などの動向にとどまらない。
 各国におけるグローバリゼーションの影響、IT(情報技術)革命への適応度合い、原油・商品価格とインフレ圧力、そうした状況への政策対応がもたらす「ハードランディング」と「ソフトランディング」の見極め、世界の過剰貯蓄によるリスクプレミアムの低下、投資ファンドの活動範囲拡大による過剰流動性の流出入チャネル多様化と各国の金融・資本市揚に与える影響なども十分に精査されなければならない。
 このような極めて難しい状況の下で、市場に混乱を起こすことなく「フォワードルッキングな金融政策」のかじ取りができる人は福井総裁しかいない。しかも各国市場の連関が深まる中で主要国の中央銀行総裁方の福井総裁への信頼は抜群である。総裁のファンド投資には不注意な点もあるが、ポピュリズムにあおられ不当に批判する愚は慎まねばならない。(恵海)
<引用終了>

まったく同意です。「庶民」の代表を気取った正義のメディアの煽りでバブルを目の敵にした結果、失われた10年を経て、自殺者が3万を超える世の中ができました。「庶民」と「メディア」は合わせ鏡のように互いにおろかな共鳴を起こし、自らの首を絞めるのです(キリスト教界も同じ)。かつての文化大革命の時に、教師や科学者などの専門家を排除した中国がその後どのような損失を蒙ったかを見るべきでしょうね。ポピュリズムの実は結局「庶民」が刈り取るのですから。