No.1493の記事

人による裁き

今般、幼児が転んだ際割り箸をのどに刺し、それが小脳に刺さっていることを見落とした医師に対して無罪が言い渡された。また最近、産婦に対して胎盤剥離の無理なオペをしたとして産婦人科医師が逮捕された。さらに例の7人の安楽死の医師。以前にも美人女医が安楽死をさせたとして逮捕された。この方とは私も間接的な関係があるのだが、彼女の妹さん(某有名私大医学部教授夫人だった)が自殺した。

・・・というわけでこの手の事件が起きると、直ちに逮捕とか、刑事告発とか、医師も安穏としていられない風潮である。現在、小児科と産婦人科の医師がどんどん減少し、胎盤剥離のオペをした医師のいた病院は産科は休診。さらにその地域の3つの病院でも大学の医局から派遣がなくなって、たったひとつの病院だけになったようだ。小児科や産科は特に夜間の勤務がきつく、子供相手の診断や治療は難しいとのことで、志望する若手医師は減少の一途。ちなみに小児科と産科がもっとも訴えられるリスクが高いそうである。

医師も人間であるから、家族団らんを願うだろうし、休日には家庭サービスも必要。だから医師は高額な年俸なんだろうと言うのは言いがかりもいいところ。勤務医の年収は1500万前後であり決して高くはない。私の友人でも血液を専門とする医師がいたが、ある病院の勤務条件が夜間でも必要があればただちに出ることとあって、結局彼は体がもたずに辞めた。

肉親を亡くされた家族の感情的な要因は理解できるが、この手の医師のミスを刑事で取り扱うのは果たしていかがなものであろうか。胎盤剥離の医師とて、患者を実験台に使ったわけではなく、学会でも困難なオペであるとしているし、その場にいたら何かしなくくてはならないだろう。献血の用意もしていたわけだから、困難は予想していたはず。単純なミスではない。

真実が隠蔽されたりする場合は何らかの訴えも必要であろうが、単に被害感情を晴らすための訴えは決して生産的ではない。このような風潮が蔓延するにつれ、若い医師は刑事でやられたらたまらないからとますますこれらの科を避けることになろう。そしてそのツケを払うのは患者なのだ。「被害者」こそ絶対善的な最近の空気が何かおかしいと感じるのは私だけであろうか?

Commented by Sky URL2006年03月30日(木)18:41

こんにちは。いつも拝見させて頂いています。
今回の、ルーク先生のコメントを拝見しましたが、問題点を冷静に、客観的に述べて下さり、共感をもって読ませて頂きました。

>「被害者」こそ絶対善的な最近の空気。

これは、私も感じています。

(割り箸の事故の、ご家族の、無念なお気持ちには、言葉もありませんが、)あえて、冷静に分析するならば、の参考情報ですが・・・、MIXIという、紹介者がいなければ参加できない、割と信頼できる掲示板には、「ある医師」の次のような書き込みがありました。

(その医師の紹介者もその掲示板にいますし、ご自分の写真も載せているなど、私は割と信頼性の高い情報と思いました。)

その医師は、その病院のことをよく知っているそうですが、「そのお子さんの親は、初診の時には、割り箸を持って(くわえて?)いたことは、当直医には言わなかった。」と述べています。
しかし、もし、それが本当であっても、重要な事実であるにもかかわらず、マスコミは「被害者こそ、絶対善」として、その事を報道しないような空気が、確かにあるように思います。

医師が、産科や小児科など、訴訟の可能性の多い科に行かなくなったり、また、(訴訟が怖くて)夜間には専門外の患者さんは一切みないことにしたりしたら、もちろん、困るのは、国民ひとりひとりでしょうし、このままでは、そういう時代が来ないとも限りません。
その事は、重要であると思いまして、今回、あえて(医師のはしくれとして)意見を述べさせて頂きました。

(もちろん、医師サイドとしても、常に、細心の注意を怠らず、日々の努力をすべきことは、言うまでもありません。)

Commented by Luke 2006年03月31日(金)12:18

安楽死の件は家族が同意をしていたものの、事実と違ったことを証言したことを認めているようですね。しばしば人の証言は自分に有利になるようにするものです。

http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20060329-00000000-mai-soci

村岡氏も無実と判決が出されたようですが、真実はうやむや。裁判長が指摘しているように橋本氏が一番臭いのですが・・・。