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Dr.ルークの一言映画評-『レディ・ジョーカー』-

本牧で家内と観る。新社会派高村薫の小説の映画化。渡哲也がいい味を出している。競馬場で知り合った薬局経営の請井、旋盤工、トラック運転者、在日の人物、そして刑事が大企業の社長を誘拐し、その商品であるビールを人質に20億を要求する。しかし表向きは5億で取引した様を装う。

会社は裏取引に応じて20億を支払い、しかしその事実を社長が単独で行った背任行為として刑事告発してトカゲの尻尾きり的に事件を収める。刑事は警察内部の腐敗にあって犯罪に走る者と、その矛盾に苦悩しつつも刑事として立っていく者とが葛藤する。

主人公請井も貧困に育ち、その大企業を理不尽に追われた兄に対する一種の復讐を貫くが、結局は社会の弱者としての生き方に収まる。父親に捨てられたレディこと、身障者の少女を最後に引き取り、しみじみホッとする場面で終わる。

高村薫は誘拐事件を通して企業や警察などの組織の不条理や理不尽を描くことではかなり透徹している。渡が「この映画で生き方をもう一度考えて下さい」とCMを振っていたが、確かに考えさせられた。

何が一番大切なのか。少なくとも金ではないし、名誉でもない。いつも言っているが、私にとっては、当たり前が当たり前であること。普通であること、平凡であること。悩む人、病気の人は、普通が普通でなくなっている。

高村薫にニッポンキリスト教を書かせたら、かなり面白い作品が生まれると思う。

http://www.kingdomfellowship.com/Column/flowing1.html