個別表示

チェチェンテロの惨状に思う

ロシアのテロもすごい結果になりました。死者250人以上、負傷者700名。チェチェンについても人口100万、岩手県ほどの国でありながら独立を認めないのは石油資源が絡んでいるようです。
http://chechennews.org/

この種のテロ事件の背後にはイスラムが絡んでいるのですが、アメリカにしても聖書原理主義者にしても対イスラムの政策を間違えています。根底には信仰の覇権主義ではなく、アイデンティティの問題が絡むからです:
http://www.kingdomfellowship.com/Ministry/Ron/identity13.html

私たちの立場からこの種の話を論じますと次のようになります。人間の脳は(あれ、いきなりなぜ、と思った方、ちょっと付き合ってください)、脳幹、その上に辺縁系と基底核、さらにその上に大脳皮質の3層構造からなります。

脳幹は生命現象の基本を司り、辺縁系や基底核は性欲、食欲、運動中枢を、皮質は知能と行動を制御します。で、いわゆる知・情・意(聖書で言う魂)は感覚や情動を支配する辺縁系と、運動に関わる基底核の働きと同期します。この辺縁系には海馬や扁桃といった人の原初的情動や記憶と関わる機構があります。大雑把にいって、深い記憶は海馬と、扁桃は情動と、即坐核は意志と関係します。つまり心の実体(聖書的には心を支える機構)はこの辺縁系と基底核なのです。

しかし人間は大脳皮質が大きく発達して、いわゆる知性を肥大化しました。さて、言いたいことは、人の深いアイデンティティや愛情などの情動をコントロールするのは脳の第二層であり、いわゆる思想や主義を生み出すのは第三層なのです。表向きの正しさを押し付けられるとあえて反発したくなるのは、相手は大脳皮質に訴えているのですが、自分の辺縁系・基底核が情動的に拒否しているのです。逆に、同胞を守ったり報復するための自爆テロなどの場合、大脳皮質の論理性は抑圧され、辺縁系・基底核レベルでの反応が起きているわけです。人間は論理によって行動するのではなく、実はこの第二層の情動によることが多いのです。

お分かりでしょうか、アメリカ的聖書原理主義者などは聖書解釈の整合性や論理性に訴え、また自由と平等などを旗印に論理的に相手を自分の境界線の中に入れ込もうとしますが、相手は大脳皮質で反応してはいないのです。彼らは自分たちの民族的なアイデンティティや宗教、それは脳の第二層に焼きこまれていますが、を守るために反応します。

チェチェンの人々にしても彼らは元々のテロリストではありません。テロをしていますが、生まれは普通の市民なのです。しかし彼らの脳の第二層に焼きこまれた民族の誇りやアイデンティティを否定される時、止む無くテロと言う手段に訴えるしかなくなるのです。テロはもちろん許されません、が、彼らを追い詰める脳の第三層による西欧型思考行動パタンを省みる必要があるでしょう。民族の自立や誇りは大脳皮質にはないのです。聖書解釈を誇ったり、見せ掛けの正義の旗を振り回す人々は人間を知りません。ついには武力で制圧できるという幻想に落ちています。

人の心が理解できなくて、どうして人を治めることができましょう。この手のテロが起きるとすぐさま、「あくまでテロと徹底的に戦い、テロリストを駆逐する」と口を尖らせて叫ぶ猿的政治家が多いですが、これは幻想です。なぜなら元々テロリストなどはいないからです。彼らが自分でテロリストを生み出しているからです。

福音伝道の場面でも同じです。相手を折伏して、相手の第二層を否定するならば、けっして人は神の愛を知ることはできないでしょう。なぜならそのような伝道は第三層に訴えているだけだからです。心の働きを支える第二層に訴えることなしには人は心を開きません。この意味で聖書知識とキリスト教習俗・文化を強要するアメリカ型の宣教が不毛であったことはすでに歴史が証明しています。真理は普遍ですが、真理を入れる器に対する配慮が必要なのです。それは大脳の第二層に訴える伝道です。→
http://www.kingdomfellowship.com/Ministry/Ron/identity16.html