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自分を語る言葉

面白いですね、人の心は。そしてキリスト教界というところはその病理がモロに表出するようです。実に人間の病理標本には事欠きません。

同じ聖書を読んでも、神学的に真っ向から対立し、相手の人格までも云々となります。ひとつの事件に対しても証言が見事に食い違ってきます。

しかし、ひとつ言えることは、必ず自分にとって益または有利となるように語ること。特に心を病んでいる人は、巧妙に人の同情を買い、ウソと脚色を交えて、自分に有利な方向へ誘導する術策に長けています。実に黒沢明は天才でした。

こういう話があります。ある極みまで完成された絵を人に見せます。それに対して批評をするその言葉を聞けば、その人の内面が分かると。

あるいは「線形システム理論」という分野があります。ブラックボックスに、ホワイトノイズ(すべての周波数の音を均等に含む雑音)を入れて、そのアウトプットを見ると、その内部の構造(伝達関数)が分かるのです。

医師が胸をトントン(インパルス刺激)と叩いて、反射音から胸腔内部を診ることも同じです。

そして人の心も同じです。私たちが「何か」について語るとき、その語る対象を批判しまた暴露しているのではなく、実は自分の内面を暴露しています。

私たちは人と関わる時、その人の発言の内容の真偽よりも、そこに出るトーンやニュアンス、そして霊を観察します。言葉には必ず霊が乗ります(人格を持った霊ではないですよ)。そして必ずその人の心の動機が見えてきます。人はその言葉によって自分自身を雄弁に語っているのです。