今日の一冊

アップロードファイル 7KBインテリジェンス・武器なき戦争』。元NHKワシントン支局長手嶋龍一氏今回も二審で有罪となった外務省佐藤優氏(起訴休職中)の対談。これは面白い。以前に江畑氏の『情報と国家』を買う時、どっちにしようか迷ったのだ。江畑氏のがややテクニカルな内容に対して、手嶋&佐藤氏のはきわめて人間臭く、「外務省のラスプーチン」と呼ばれた佐藤氏の件の裏話も含めて情報戦の体温と体臭を感じる内容。あのゾルゲなども分析しているが、情報を得て、分析し意味づけし、それをインテリジェンスとするまでには相当に汗の臭いが入り込むのだ。公開されて情報で90%の真実を得ることができるとするのは江畑氏と同じだが、最後は人間と人間の関わりの中で生きた情報は得られる。手嶋氏には『ウルトタラダラー』、佐藤氏には『自壊する帝国』などの著書があるが、これらも涎が出てきた。ちなみに佐藤氏は同志社大学神学部卒業とか。鈴木宗男氏と共に外務省に刺されたわけだ。裏を読む必要があることはどの業界でも同じらしい。

文藝春秋2月号

今月も面白い記事が目白押し。

栗林中将衝撃の最後−『硫黄島』で名称とされた中将の最後はノイローゼ状態に陥り、指揮不能となったあげく、自ら降伏しようとして、部下に惨殺されたと言う説を検証する。意外にも自衛隊でこの説が広がっているとか。検証結果は・・・。

10年後の「格差社会」−個人、会社、所得、資産、教育、自治体、治安、対災害、医療、結婚、老後における格差の生じ方のシミュレーション。これはかなり身につまされるかも。

希望の国へ-私の日本再生計画-−経団連の御手洗氏の論考。格差は生じて当たり前。結果平等ではなく機会平等を唱えるが、終身雇用は維持し、年功序列を改めよと訴える。私的には新自由主義による弱肉強食的社会は日本人には絶えられないであろうと考えるが、その中庸を唱えている。

ローマ滅亡に学ぶ国家の資格−あの『ローマ人の物語』15巻を完結した塩野氏を囲む討論。ローマは多神教で宗教的にも文化的にも寛容な国家であったが、一神教のキリスト教が入って「溶解」を起こして滅びに向かったとする。それと同じ構図が、アメリカ帝国主義対イスラム原理主義として再現している、と。ふーん、ローマを滅亡させたのは一神教のキリスト教なのか・・・。私的にはキリスト教ではなく、肉において現れた神であるイエス・キリストご自身を信じているのだが、これも排他的非寛容な一神教になるのだろうか・・・。

ブッシュの戦争と金正日の核−これから読みます。

で、ホッと一息・・・

昭和の美女ベスト50−1位は吉永小百合、2位の原節子とかは分からんが、山口百恵が13位に入っていたぞ^^

本日の一冊

アップロードファイル 161KB大下英治著『欲望銘柄』。あの「投資ジャーナル」の中江滋樹や誠備事件などをモデルにしたと思われる、株の仕手筋の物語。株式相場が裏でどのような仕掛けの中で相場が作られていくか、迫真のドキュメント。ニッポンキリスト教のわけの分からない事態に巻き込まれる時にはこういった本がイイ。頭がリフレッシュされるから面白いもの。皆さんにも教会でメンドウにして疲れる事に関わる時には、ぜひこんな本をお薦めします^^

本日の一冊

アップロードファイル 12KB脳は空より広いか-「私」と言う現象を考える』(草思社刊)。ノーベル賞学者ジェラルド・M・エーデルマンによる、「私」と大脳生理学の関係、クオリアのありかを追求した論考。大脳自体はニューロンのネットワークとシナプスにおける神経伝達物質による化学反応によって作動している。この大脳の中に意識が生じ、「私」が住むわけだが、その「私」の実体とは?著者は意識を「原意識」と「高次意識」に分け、その大脳生理との関係性を「神経細胞群選択説」に基づいて生成される「ダイナミックコア仮説」により説明を試みる。言われてみれば簡単なこと。私が「私」を理解できるのかと言う根本問題が解けていないわけだが、それでも中々面白い。少なくともill-posedな問題をケンケンガクガク論じる神学論争に比すると、はるかに実のある議論がなし得る。正月ボケしたオツムを活性化するのに最適。

ソニーの凋落

についての論考が『文藝春秋』新年号に掲載されていた。その中で、ソニーの凋落を招いた原因として「フロー」の喪失があると言う。「フロー」とはアメリカの心理学者チクセントミハイ氏が唱えた用語で、無我夢中で何かに取り組んでいるときの精神状態と言う。技術者たちがこの「フロー」の状態に入ると「燃える集団」が構成され、創造的仕事もなされる。そのためには「内発的動機に基づいて行動すること」が必要で、それは報酬や評価を得たいと言う「外的動機」によらない。そのような条件を企業は醸す必要があるという。

何だ、これは没我の状態にして「流れる心」であり、先に書いた自分を注ぎ出ている状態である(→意識の扱い方およびいのちの内発的発露)。日本ではすでに剣の達人柳生但馬が言っている、「心の病とは心が何かにとどまること」と。フローはこの逆であり、禅やいわゆる「道」が求めた「無心」あるいは「忘我」の状態である。前にも書いたが、道元はこう言っている

佛道をならふといふは、自己をならふ也。自己をならふといふは、自己をわするるなり。自己をわするるといふは、萬法に證せらるるなり。萬法に證せらるるといふは、自己の身心および他己の身心をして脱落せしむるなり。

また道元の『正法眼蔵生死』のキリストヴァージョンはこちらを・・・。いずれも今のニッポンがアメリカの長期戦略の中で喪失したもの。すでに日本にはある(った)のだ。

かくしてソニーの凋落もまさに先に述べた精神エネルギーの滞留と空転によるのであり、現代ニッポンの病理のまたひとつの大きな兆候である。

副島隆彦と言う生き方

かつてのわが同僚だった副島氏が自分の人生を語っています(→副島隆彦の学問道場)。中々面白い。80年-90年代を共有していますので、共感できる部分もかなりありますね。一度人生を降りたとか・・・。キリスト教についても同感できます。ある面で頭が良すぎるのです。だから見えてしまう。するとすべてがバカらしくなる。だいたい予備校の先生をやっている人種はこのような価値観の人が多いのです。私もクリスチャンにならなかったら、副島氏と同じ生き方をしたでしょうね。新宿での浮浪者生活もある面で憧れますし、だから横浜の寿町なんて、私にとってはかなりフィットするわけで・・・。おっちゃんたち、元気かなぁ・・・。

温泉までT-13Days

今日の一冊

アップロードファイル 13KB今、講義が終わったところであります。本日の一冊は、映画『硫黄島からの手紙』で興味を持ちました栗林忠道氏に関する本。『栗林忠道-硫黄島の死闘を指揮した名将』(PHP文庫)。

明らかに無意味とも見える絶望的な戦闘の指揮を取らざるを得なくなった同氏の言動をリアルタッチで描く。著者自身も傭兵として戦場をくぐった経験があるだけに、その描写がリアル。元々は別のエリートが赴任する予定だったが、そのエリートは体よく逃げたのだった。何のために・・・。それはただ本土への爆撃をできるだけ遅らせるため。アメリカ生活も経験している栗林にとっては、硫黄島派遣の意味は明らか。その中でアメリカ人の思考に沿って布陣を引き、作戦を立てる。かくして5日で終わるだろうと言う戦いが36日にも及び、米軍の死傷者数25,000。老練な米国指揮官のスミス氏を震撼たらしめた。最後は自ら敵陣地に突撃して果てる。

虚しいと言えば、まったく虚しい。が、彼らは「何か」に自分を注ぎ出した。天皇、それとも家族のため?こういう状況に追い込まれてなお精神の正常さを保つには、「何か」にかけるしかない。私はけっこう大石内蔵助や栗林忠道みたいな人物の生き方、というよりは死に方には心惹かれる。自分を「何か」のために注ぎ出し、捨てること。それはまったく愚かである。が、私はその愚かさに憧れる。ウォッチマン・ニーの最後にも通じるものである。もちろんこのような証しを立て得るのは格別の祝福があるからなのだが。

情報と国家-収集・分析・評価の落とし穴-

アップロードファイル 5KBテレビでよく見かける江畑謙介氏著。ややオタク系かなと思っておりましたが、かなり学術的。

先の論考とも関係するが、日本語には対人関係に関わる語彙はややこしいほど豊富なのだが、情報に関わる語彙がきわめて貧弱。日本人にとっては対人関係は敏感かつ大切なのだが、情報についてはうとい。元々「情報」なる単語もあまり適切ではない。文字通り「情」の「報せ」だから。これってやはり西周あたりの造語でしょうか?

江畑氏はここに落とし穴があると指摘する。第一に"DATA"に相当する日本語がない。第1次的に得られる生の数字なり、文字なりのこと。確かに私たちも「データ」と呼び、日本語では???。データが集まって種類に従って関係性が見えてくるとそこに意味が生じる。これが英語では"INFORMARTION"。それを分析し評価して得られるもの"INTELIGENCE"。こうして生のデータは文脈化され生きたものとなる。

ところが日本語には各レベルに相当する単語がない!?WWUにおいて勝敗を決めたのは情報戦だったわけだが、日本人は「情」に対しては敏感であるが、「インフォメーション」にはうといわけだ。これは現在も同じ。このあたりも「情」先行になってネットを使いこなせない原因だろう。第一、イラク関係の米軍の機密情報すらも自衛隊からWinnyを通して漏れる始末。

なお、国家レベルの情報についても、例えば冷戦時代においてすら、CIAは東側の80-95%の情報を公開情報から得ていたとのこと。問題は公開されている情報を生かすも殺すも、受け取る側の姿勢によるわけだ。かなり面白い1冊だった。

で、私たちもこれからCT関係のデータの分析にかかるわけだが・・・。何が出てきますかね^^

20世紀少年

アップロードファイル 16KBついに『20世紀少年』22巻が出ました。夏に子供のを横取りしてはまったのですが、今回は私が自前で・・・。2008年に映画化されるとか。楽しみですね。

神はニューロン・ネットワークの中に?

先に紹介した『文藝春秋』の「般若心経いのちの対話」と称する仏教者と生命科学者の対話が面白い。共に「いのち」とは何ぞやと問い掛けており、「いのち」の鍵は「wholeness(統合性)」にあると主張される。なんだよ、私の論と同じだぞ、と思って読んでいると、ムムム。何とこうおっしゃっている、「神とはいわゆる一神教の神ではなく、大脳の中のニューロンのネットワークとドーパミンやセロトニンなどの神経伝達物質の作用として存在する」と。・・・肉体となった神を告白するのはきわめて困難な事―否、知性では不可能なのです。

イエスはペテロに言われた、「わたしを誰と思うか」。ペテロは答えて言った、「あなたは神の子、キリストです」。イエスは言われた、「バルヨナ・シモン、あなたは幸いだ。これを啓示したのは血肉ではなく、天の父である」。

今話題のID理論やクリスチャン・トゥデイがらみの問題も、まさにこの告白が焦点なのです。

人を惑わす者が大勢世に出て来たからです。彼らは、イエス・キリストが肉となって来られたことを公に言い表そうとしません。こういう者は人を惑わす者、反キリストです。

PR:文藝春秋12月号

今月も、面白い記事が目白押し。

年金150兆円が食い潰される―社保庁改革に騙されるな
年金流用で元手がどんどん減っているわけだが、そのカラクリが巧妙に残されるのだ。「俺たちに明日年金はない!」

さらば、扇動と強者の政治―小沢さんの小泉政治批判。いまいち印象が薄いが、ガムバッテ欲しいのだ。

第二次朝鮮戦争か、日本核武装か―私は徴兵制を復活せよと考えているのだ、韓国のように。以前は受験戦争で若者が鍛えられたが、今はダメ。どこかで絞り上げないとニンゲンは使えなくなる。核はもってもビビって使えないのではなかろうか。

中国は世界の暴走機関車だ―ジョージ・ソロスの論。再建主義の富井さんが中国は4つに分割せよと言っていますが、この国のパワーは抑えられないだろう。

子供を殺すのは教師か親か―私的には世間の空気だと言いたい。教育基本法などいくら改正しても今の流れは変わらない。生存をかけて学ぶ危機感を持たないと。

ゆとり教育で「技術立国」崩壊―これはもう20年も前に分かっていたこと。文科省の何とか言うゆとり教育の旗振り役は天下り先もなくなったらしいが。ちなみに公立学校も自由化で二分化が起きているとか。このような競争は実にいいことだ。

般若心経いのちの対話―人は「空」の境地に到達できるか、と考えた時、「空」から落ちているのだが。

ではこれから楽しみます。

本日の仕込み

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天皇家の宿題―不可思議な皇室の真実
日本神話の考古学―神話の考古学的解釈
脳と無意識-ニューロンと可塑性-―神経生理学者とフロイトの出会い

う〜ん、いずれも疼きを覚える・・・ぞ。

古代日本と天皇霊

ややアブナイ話題が続いたので、先に紹介した本に沿って、再び古代史に戻りましょう。

古代日本では祖霊信仰が行われ、交霊のできるシャーマンが民の導き手であった。卑弥呼などもそう。しかし4世紀頃から一般的な祖霊崇拝ではなく、特異的な霊=天皇霊(すめらみことのみたま)=を崇拝する方向に変わってきて、その霊を宿すことができる人物が登場した。これが天皇であると。天皇は神と等しい者とされた。彼らは自分の武力や才覚で民を支配するのではなく、天皇霊の故に統治できた。で、天皇家は代々この天皇霊を連綿と宿してきているわけ。

かくして祖霊信仰から天皇霊信仰へと変化を遂げたことが大和統一への原動力となった。そこで昨日、国文学の先生にも、この祖霊信仰から天皇霊信仰へと移った経緯をたずねたのだが、これがよく分からないらしい。何ゆえに歴史の中に天皇霊なる特異的な霊が入り込んできたのか?そもそも天皇霊の出自と正体とは?とても興味深いテーマではあるようだ。

しかもこの天皇霊のメッカ(?)は、実は、奈良は山之辺の道、三輪山なのだ。そう、Salt氏の住まわ・GkanagawaFL40.vectant.ne.jp