No.85の記事

甘えの病理

ニッポンキリスト教の種々の問題はほとんどが甘えの病理で説明できるようだ。私も学生時代に講義を受けた土居健郎先生はクリスチャンであり、ベストセラー「甘えの構造」で有名な精神分析学者である。先生の本に「聖書と甘え」(PHP新書)があるので紹介しておきたい。

精神を病む患者さんで年季が入ってくると、薬の知識や精神療法の知識だけは豊富になる人が多い。そしてあの病院のこの先生はかくかくしかじかと、実によく医療の裏話を知っている。これは教界でも同じ。私の元に来る人で、実によくニッポンキリスト教界の裏や有名どころの先生の裏を知っている者がいる。

初めは私もものめずらしく聞いていたが、そのうちに面白いことに気がついた。このようにあちこちを放浪しているジプシークリスチャンの場合、その深層心理に裏切られた甘えが潜んでいることが多い。つまり彼らは教会や先生に対して、自らの甘えの満足を求めているのである。

そこでこのような人の場合、その人の甘えの要求に沿わない場合、容易に次の放浪に出るわけである。そしてこのような人物はあちこちでこのような裏話をするわけであるが、自分の歪んだ目で見た"事実"を話すわけで、その話は信頼できない。真にイエスのみに焦点付けられている人は、そもそも他人に期待することがない。言葉の多弁さと信頼性は互いにトレードオフ(反比例)である。

私のところにもかなり多くの人が出入りしたが、Dr.ルークに躓く者は結構多い(苦笑)。私はニッポンキリスト教の牧師のようにニコニコ(しかし目が笑っていないが)、何でも受け入れますよ、といった対応はしない。ある時期は相手に合わせるが、その間はやたらとベタベタしくるが、相手の甘えが見えた段階では、まずそれを受けることはしない。むしろ彼らの期待と反対に応ずる。なぜなら彼らは自分の甘えを満たすために、人をマニュピレーションすることに長けている。よってそれに一度乗ると、何度でもそのパタンを繰り返す。実に巧妙にして狡猾である。しかも悩んでいることを免罪符にしている。

要するに大人になり切れなず、しかしオツムだけは大きくした者が多い。彼らは知識だけは実によく持っている(耳年増クリスチャン)。しかし自分の内的葛藤は処理できず、周りの人々を巻き込みながら、果てしない泥沼でもがいている。最も深くにある病理は満たされていない甘えである。これは土居先生が日本人の根本病理として提示されたが、ニッポンキリスト教界はまさにその実証例(病理標本)に事欠くことがない。